7月 10 2017

連載と夏コミのこと

2009年に父親が亡くなってから、人が死んだり傷つけたりするお話が描けなくなってしまった。飛行機にも乗れなくなり、エレベーターも電車の揺れも怖くて仕方なかった。生きることと死ぬことの両方が怖くて仕方なく、一年くらいは虚空を見つめては泣いてばかりいた。でもここ二年くらいは死ぬことも生きることの一部と、フォレスト・ガンプのママの云ったことを噛み締められるようになった。一年ほど前に約束したように、(してないかもしれない。したような気がするけど)ちょっと長めのお話を読んでもらいたいという願いが叶うかもしれない。現実になれば連載が始められる。そしたら毎月読んでもらえる。人の生き死にを題材にしたものも描けるようになった。描く必要が必ずしもあるわけではないけど、不自然に避けて通ることをしなくて良くなった。心からありがたいと思う。

そんなこともあって、夏コミは最初に予定していたものが描けなくなった。代わりに何を描こうかと思案して、そうだ、ちゃんとしたBLを描いてみようと思い至った。いつか描こうと思いながらも描かずにいたけど、勿体付けてなんの得があるものかと気づき、どうせ薄っぺらな本しか出せないから一石二鳥という具合になった。それと、この一年で描き続けた百枚ほどのカラーイラストをまとめたものも一冊。時間はあまりないけど、どうか美しい本が作れますように。



3月 31 2017

モーニングの漫画のことやこの先のこと

作品は読む人のものだから、作り手は何も云うことがない。作品でうまく伝えられなかったら、それは全て私が悪い。次に生かして精進する。商業誌は久しぶりで、ちょっと不思議な理由で描かせていただいたんだけれど、実は同人誌はここ10年くらいはそこそこ描いていた。でもそれじゃダメなんだってわかった瞬間があった。私の漫画を読んでくれようと思ってくれる人たちはみんな忙しい。2016年や2017年に、アマゾンで買えない本なんて意味がない。同人誌即売会に足を運んでくださる方々はとても奇特な方だと思ってる。本当に頭がさがる。お盆や暮れの忙しいさなかに、あの人混みに来て漫画を買ってくれと云うのはとても横柄なことだと思った。だから商業誌でなくっちゃって。でも実のところ、この先の商業誌の予定はない。予定がなければ自分で作って行くしかない。単行本に足りなかった原稿を書き下ろして本を出してもらうようにお願いするとか、新しいものを描きためて、どこかで単行本にして出してもらうとか、自分が先に何かを作らなきゃ誰も手を貸してくれないこともわかっている。
誤解を恐れず云うなら、自分の作品は誰かの人生の一部かもしれないって思うこと。偉そうなことをいうつもりはないんだけれど、時々ふとそう思う。だから甘えたり、描きたくないって思うこと自体罪深いことなんじゃないかなって。本当のことを云うと大学で働いていれば食べてはいける。だけど見放さず読んでくれようと待ってくれている人たちに恩を返さなくちゃって、だから人の倍働いて漫画を描こうと誓いを立てた。みっともないくらい宣伝してみたり、買ってくださいとお願いしたり、たくさんの落書きを描いたりするのも支えてくれた人の恩に報いたいだけ。「今月の多田由美の漫画はイマイチだった、何が言いたいのかさっぱりわからない」なんてまた云われたい。次は面白いかな?あんまりグダグダだともう読まないぞ、とか。でもそれをするにはもうちょっと本が売れないと。

これを読んでくださっている編集者さんへ。原稿のお仕事があったら声をかけてください。タダでとは云えないけど、割と安めの原稿料でも描きます。お話を作るのに時間がかかりますが、原稿そのものを描く時間はうんと速くなりました。



2月 1 2017

冬コミ C91の新刊をBOOTHで販売しています

冬コミのフルカラー同人誌をBOOTHで販売しています。売り切れになった場合、増刷してからの販売再開になりますが、BOOTHへの入庫のタイムラグなどがあり、1、2か月先になるかもしれません。BOOTHではメール便の対応もありますので、比較的お安い送料でお届けできます。手数料などかかりまして心苦しいですが、イベント会場へ来ていただけない方にも冊子をお届けできれば嬉しいです。現在他の冊子についてはほぼ完売状態です。再販について検討しながら、できる限り通販対応していくつもりです。

今後のイベント参加は5月のコミティアです。
お仕事情報については3月くらいにお知らせできると思います。少し先になってすみません。今年はなるべく皆さんに読んでいただける作品を描き続けていきたいと思っています。なるべく切れ間のないよう情報をお伝えできれば幸せです。

冬コミ新刊 Red Velvet通販ページ
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12月 25 2016

イラスト及び原稿の画材と描き方

こういったことを自分から説明するのは生意気だとは思うのですが、ギャラリーに足を運んでくださった皆さんに何かの足しになるかと思いちょっとだけ文章を書かせてください。画材と簡単な描き方の説明です。

水彩画
クレセントボードの300番とウィンザー&ニュートンの水彩絵の具を使っています。クレセントボードは10年くらい前から紙質が落ちたので、今は以前に買ってあったものを使っています。ボードを使うのは、水分が紙の芯でとどまり、表面は乾いた状態が保てるからです。水彩紙は薄いので紙の芯はありませんからを二本使ってぼかす描き方にはあまり向いていないかもしれません。描き方は、ライトレッドをオランジーナくらいに薄めて下地をくまなく塗り、画面のテカリが消失してから一段濃い色を置き、勢い良く水を切った1号太い筆で境目をぼかします。梅雨時とエアコンの効いた部屋は大敵です。大抵は線画はシャープペンシルで描きますが、色のついた別紙に線画を作り、トレーシングペーパーに移して、裏から茶色のチョークでカーボンを作って転写させることもあります。

マーカーイラスト
マーカーはレトラセット社が出していたトリアマーカーを使っていました。今も持っていますが、以前のものは全て廃盤になり、ニュートリアという名前に変わって販売されています。発色がよく、粒子が細かいのが特長です。設定資料に描いたイラストのマーカーの使い方はとても雑で、シャープペンシルの上から塗っているので色が濁っています。

デジタルイラスト
Painterと、ときどきPhotoshopを使っています。色の調節、効果、レイヤーはほとんど使わず、水彩を塗る時と同じ要領で塗っています。技法や変わったTipsなどは特になく、ただがむしゃらに塗るだけです。線画はシャープペンシルで原稿用紙の裏に描いたものを取り込んでいます。液晶タブレットを持っていないので直書きはほとんどしません。

モノクロ漫画原稿
とても普通に描いています。特筆することはありません。最近スクールペンからかぶらペンにかえました。Gペンはまだ、私には贅沢かなと思います。

カラー漫画
シャープペンシルで描いた線画を肌色だけ水彩で着色するか、すべてをデジタル着色するかのいずれかの方法で描いています。展示会にはその、肌色だけを着色した原画があります。ペン入れが苦手で大嫌いなので、カラーの漫画は必ずシャープペンシルで線画を描きます。



9月 12 2016

単行本が出る前と後のこと

大学に勤めだしてからもう十年くらいになるかもしれない。准教授として専任で働き始めてからは八年。家計の全てを私が支えていたけれど、父親が癌になってもっとお金が必要なのがわかって、諦めてしまった。大学への通勤に往復4時間、週に三日、さらにもう1日、専門学校でも仕事をしていた。週に三日の休みじゃ漫画は描けない。だから漫画を描くのは諦めてしまった。だけど漫画を描くのは好きだったし、描けば喜んでくれる人もいるだろうから同人誌だけは続けた。それとイラストの仕事も。でも商業誌の漫画の仕事なんて責任の重いものには手が出せなかった。おおよそ二十年間ほど、漫画はアシスタントも入れずに一人で描いてる。だからやっぱり片手間では描けない。

今回の「ディア・ダイアリー」を出すにあたって、書き下ろしを含めることになっていた。大学の冬休みや春休みを使って少しずつ描いていたけどちっとも間に合ってなかった。最後の3週間ほどは大学の授業を休ませてもらってほとんど寝ずに描いていた。Twitterなんかで単行本が出ることを伝えたかったけど、もし何かの手違いで本が出なくなってしまったら、誰かをがっかりさせてしまうんじゃないかと怖くて、本当に発売日が決定するまで何も云わないと心に決めた。単行本が出ることが決まってからは、力を貸してくれた編集さんや出版社の方の恩に報いるために、なるべく明るい要素を持ち込んで宣伝をしていこうと考えた。それで毎日落書きを描くことにした。休んでしまった分の授業を補いつつ、なるべく毎日描けるように努力した。大学の先生や助手の方々も授業を助けてくれてとてもありがたかった。甘えてしまってばかりで申し訳ない気持ちでいっぱいだった。長い間サジを投げずに待ち続けていてくれたファンの人たちに応えるために、私ができることは漫画を描くか、絵を描くことしかないんだと知っていた。だから何か描こうと思った。喜んでくれる人がいるのは幸せだ。居場所があるのはとても幸せなことだ。そのことの気づけたことがここ何年間で最良の出来事だ。「フォレスト・ガンプ」という映画が大好きなんだけど、その中に、エビ獲り船のジェニー号でダン中尉がフォレストに「まだ礼を言ってなかったな」というシーンがある。結局中尉は礼を言うわけでもなく、川に飛び込んで泳いで行ってしまうんだけど、フォレストはダン中尉を見て「神様と仲直りした」と感じる。記憶で書いているだけで定かではないんだけど、そのシーンがとても好きで、何度見ても何かを考えてしまう。その映画のシーンのように、私も漫画に背を向けていたのかもしれない。今は仲直りしようと、散らばった破片を拾い集めているところなのかも。ごめんなさいを云うのは簡単じゃない。時間がかかる。だけどいつか云わなければと思っている。

わかりにくい日記ですみません。